序章・目次
- 常識を覆す「新常識」
- 微生物たちの提供するサービスとは
- 微生物たちの棲家「ヒト」
前回の記事のおさらいをしよう。
- ヒトの体は2万千個の遺伝子と、100兆個の微生物によって構成されている
- 私たちが「自分」だと思っている部分は人体の10%でしかない
この2点をおさえて、今回の内容を読み進めてほしい。
微生物たちの提供するサービスとは
私たちの体に生息する微生物たちの働きぶりとはどのようなものだろうか。
身近な動物2種類を参考に、ヒトの持つ微生物の力に注目していきたい。
上の図のように、宿主は微生物たちに住処を提供し、微生物たちは宿主の遺伝子だけでは解決できない問題を代わって解決する。
生物が微生物の働きなしに生きられないとすれば、それは遺伝子が生存の危機を脅かす問題を解決するまで進化するのを待つには途方もない時間が必要になるからだ。
ヒトもまた、微生物にアウトソーシングをしている。ここでは、人体の中でも特に重要な器官のひとつである「消化管」で活躍する微生物たちについて紹介しよう。
盲腸から垂れ下がる「虫垂」は、少し前の時代まで「さしたる機能はないので切除しても構わない」と考えられていた。
その説については割愛するが、この「虫垂」には人体が微生物のために用意している隠れ家のような役割があった。
画像:http://judo.but.jp/dayori/no32.htm
中垂に隠れている微生物たちは、消化管に危機が生じた時も人体を守ってくれる。
たとえば、食中毒や感染症で荒らされた消化管を、私たちはどうやって助け出せるだろうか。
医者に処方された薬に頼るかもしれない。しかし、人体の外側から助けを呼ぶ前に、内側で私たちを助けてくれる存在がいる。死んでしまった微生物たちの代わりとなって、虫垂に隠れていた微生物が再び消化管を満たしていくのだ。
虫垂が何の機能もないように見えるのは、こうした病気が身近なものでなくなったためでもある。
わたしたちは、目には見えない内側から微生物に守られている。
次回予告 微生物たちの棲家「ヒト」
次の記事ではヒトという棲家に住む住人たちを紹介しよう。
私たちの体の様々な場所に棲む微生物たちは、どのような暮らしを見せてくれるだろうか。
つづく